印刷検査装置の導入効果 ーメリットと導入時の注意点ー
印刷品質検査装置の導入効果
本コラムでは印刷品質検査装置の導入効果について、そのメリットをご説明します。
また、導入時に注意を要する事柄もあわせてご説明させていただきます。
※印刷品質検査装置の種類や仕組みに関してはこちら
印刷品質検査装置のメリット
印刷品質検査装置は検品工程を自動化し、不良品の発生を防ぐとともに、発生した不良品を流出させないことを目的とした装置です。
よって、導入効果やメリットもそういった内容が中心になります。
メリット1 | 顧客満足度向上 |
メリット2 | ロス低減 |
メリット3 | 印刷の見える化と生産効率の改善 |
メリット4 | 印刷品質の基準が制定できる |
メリット5 | 付加価値の高い分野への投資促進効果 |
メリット6 | 省人化要請に対する回答 |
メリット1. 顧客満足度の向上
まず、印刷検査装置の導入効果のひとつに「顧客満足度」の向上があります。
不良品が顧客に流出した場合、自社製品の信頼性低下や、場合によっては納品数が不足するケースも想定できます。
最悪のケースでは不良品が市場に流出し、エンドユーザーの商品に対する評価・信頼を低下させるケースもございます。
全数・全面検査が可能な印刷検査装置を導入することで、発生した不良を未然に発見し流出を防ぐことができます。
また、不良を納品前に発見し、実際の歩留まりを把握することで必要な製造量を納期に間に合わせることが可能になります。
印刷検査装置により自社の品質水準を向上することで顧客満足度を向上できるというメリットが挙げられるでしょう。
メリット2. ロスの低減
不良品を生産工程で発見することにより、時間や資源のロスを最小限に抑えることが可能です。
インライン検査装置であれば、生産中に不良発生率がわかります。
これにより、不良が多発しているようであれば適切な対応をすることにより、資源ロスを予防できます。
オフライン検査装置では、加工完了後の検査となるため、発生の予防は困難ですが、顧客への流出を防ぐことで、流出した際の再生産のための時間・資源的なロスを減らすことが可能です。
もちろん、オフライン検査装置にて発見した不良をもとに、機械メンテナンスやオペレーターの技能向上の必要性を把握し、対応することで、将来的な不良発生を予防することは可能です。
ロスの低減というメリットは、印刷検査装置の導入理由の中でも主たるものです。
メリット3. 印刷の「見える化」と生産効率の改善が可能
インライン印刷検査装置やオフライン印刷検査装置を導入した場合、「全数・全面検査」が可能になります。
これにより、「見える化」を行うことで自社の実際の印刷生産効率がわかるようになり、そこから業務の改善点も把握できるという導入効果があります。
印刷検査装置を導入することで、例えば印刷機のメンテナンス不足やオペレーターの技能向上が必要等の改善課題を発見できます。
また、不良発生を前提に生産する「予備分」の数量を減らすことで、利益率も向上します。
このように、印刷検査装置の適切な運用により、業務改善課題や経営課題へのアプローチが可能というメリットがございます。
メリット4. 印刷品質の基準が制定できる
基準を数値により設定する印刷検査装置であれば、自社の印刷品質を数値により制定することが可能です。
これまでは、顧客や品質管理、オペレーターの主観的な感覚で決まっていた品質基準を数値により管理することで、顧客とのコミュニケーションが客観的な指標に基づき行えます。
主観や印象によらない、数値で説明できる基準で顧客と合意できるようになるため、印刷検査装置にはビジネスの安定化が可能というメリットがあると言えます。
メリット5. 付加価値の高い分野への投資促進効果
検品業務は直接的には付加価値を高める業務ではございません。
反面、そこに投下されている資源は確かに存在しており、その資源をより付加価値を生む分野や設備に投資できれば事業の成長にもつながります。
印刷事業自体の付加価値を高める分野への再投資や、近年、印刷外の事業への投資を行う印刷会社様も増えていることを鑑みると、印刷検査装置を導入し、投下可能な資源の余裕を確保できれば事業にとって少なくないメリットを生み出します。
メリット6. 省人化要請に対する回答になる
生産効率の観点とも一部共通しますが、印刷検査装置には省人化というメリットがございます。
人件費の削減は前項で説明しましたが、それとは別に少子化や採用の問題という観点からも少ない人員での操業を強いられるケースが増えてきております。
印刷検査装置があれば、限られた人員を検品に回す必要性や拘束時間を減らすことが可能です。
このように、印刷検査装置には省人化の要請に応えることができるというメリットがございます。
印刷品質検査装置を導入する際の注意点・準備すること
印刷検査装置は上記のとおり顧客満足度やコスト低減、投資効果の側面でメリットが多い装置です。
しかし、つけるだけで最大限の効果を発揮できるという夢のような機械ではありません。
ここでは印刷検査装置を導入する際の注意点や準備が必要なことをご説明いたします。
印刷検査装置を導入する際の注意点1. 適切なスペックや検査設定
印刷検査装置は厳しくすれば厳しくするほど「小さな差異」を見つけることが可能です。
しかし、無害な線の太り、再生紙のきょう雑物、ひとの目には分からない色の違いなど、「差異はあるが、良品範囲内」という現象は常に発生します。
非常に小さく、薄い欠陥がたまたま顧客から指摘されたとして、それを基準にすべての印刷物を検査していった場合、本来良品範囲なものまで不良品扱いとなり、生産効率を下げてしまいます。
印刷検査装置のスペックや検査設定は、歩留まり率を考慮した上で定める品質基準に即している必要があります。
導入前、導入時、そして導入後に印刷検査装置メーカーと対話を重ねて、印刷検査装置のスペックや検査設定の厳しさを調整することで自社の歩留まり率を害さない印刷検査装置の運用が可能になります。
印刷検査装置を導入する際の注意点2. 抜き取りまで意識したワークフロー
「抜き取り」を含めたワークフローを意識して導入しないと、印刷不良を見つけても抜き取りが間に合わず、適切な導入効果が望めません。
不良が自動振分けされるリジェクト機構がない場合、ナンバリングプリンターやテープインサーターによるマークを頼りに人の手で抜き取りを行います。
高スペックや厳しい検査基準を敷いた場合、少なくない数の不良が検出され、抜き取りが間に合わなくなり、結局大ヤレしか抜き取らないという運用になる場合もございます。
不良を流出させないという意味では、「大ヤレしか検出しない」とほぼ同じ結果です。
それならば、高スペック=高価な印刷検査装置を購入したり、検査設定を厳しくしたりしないで、「大ヤレだけ」と割り切ればよかったということになってしまいます。
無駄な投資を行わないためにも、自社が採用する抜き取り方法と検査の厳しさのバランスを考慮した上で、印刷検査装置やそのオプションの選定、および検査設定、ひいては運用やワークフローの確立が必要になります。
例えば、以下の運用は各検査装置において抜き取り可能数と検査の厳しさのバランスが取れています。
- インライン検査装置では大ヤレ・中ヤレが検出できるスペックのものを購入して人の手による抜き取りを行う
- 本当に厳しい検査が必要なものだけをリジェクト機能付きのオフライン検査装置にかける
印刷検査装置を導入する際の注意点3. 品質管理や機械保全体制を整備する必要がある
メリットの項でも書きましたが、究極的には「不良を発見する」よりも「不良を出さない」が印刷検査装置の最大の導入効果になります。
そのためには品質管理の仕組みや機械メンテナンスの仕組みを適正化する必要がございます。
例えば、「自社の品質基準と歩留まり率をバランスさせた検査設定を探る」という作業は品質管理部門が管轄し、印刷検査装置メーカーと共に追及する作業となります。
また、印刷検査装置が自社ルールに基づいて運用されていることを確認したり、定期的に検査結果をレビューすることも導入効果を高めます。
レビューの結果、機械オペレーターの技能向上が必要かの判断も必要となるでしょう。
さらに、印刷検査装置による「見える化」の結果、印刷機メンテナンスの不足が疑われる際に、調査やメンテナンスが行われないと、不良の予防効果は期待できません。印刷検査装置を適切に運用しようとした場合、機械メンテナンスにかける時間やその意識を持った従業員の育成が必要になります。
印刷検査装置を導入するだけではなく、上記のような品質管理・機械保全の仕組みを備えておくことで印刷検査装置は生産効率へのプラスの効果を生み出します。
弊社は20年以上印刷検査装置を製造販売しており、様々なお客様の運用方法を把握しております。
「印刷検査装置の導入効果を最大化するためにどういった品質管理・機械保全の体制が必要か」に関してもご質問ください。